VSTプラグインの説明を読んでいると時々リニアフェーズだとか直線位相だとかの単語が出てきます。
(リニアフェーズと直線位相は全く同じ意味で、単に英語か日本語かの違いだけです)
これは何を意味しているのでしょう?
それを知るにはまず、位相とは何かを知る必要があります。
位相とは
位相とは、波がどの位置から始まるかを示した値、の事です。
基本的に位相はラジアンで表されます。
つまり、0~2πまでの範囲で表され、0と2πが同じ位置となる関係となっています。
サイン波1周期分の波を考えたときに、波の開始位置がどこから始まるかによって一定範囲内の波の形が変化するので、音を混ぜ合わせた時に位相がずれていると思わぬ事が起こる場合があります。
位相がずれると何が起こるか?
上記2つは位相差がπ、つまり180°ずれているサイン波ですが、どちらも同じ周波数を表しています。
しかし、この2つのサイン波を合成するとそれぞれが打ち消しあって無音になってしまいます。
位相がどちらも同じだった場合はボリュームが2倍の音になります。
つまり、位相がずれる事によって合成結果の音のボリュームが変化するのです。
この法則は全ての倍音にも当てはまります。
従って、例えばセンドで何かエフェクトをかけてそれを戻した時に位相がπずれていると、結果的に(極端な例ですが)エフェクトで消えた音と、エフェクトで作成された音だけが残りエフェクト前と後で同じ周波数を保っている音は全て消えてしまう、といったことがありえる事になります。
(無論、実際にはこんなに極端なことは起こらない訳ですが、理論上そうなる可能性があるという話です)
リニアフェーズ、あるいは直線位相と呼ばれるプラグインは、こういった事が起こらないように位相ずれを完全に無くすように設計されているエフェクトの事です。
この特性を持ったプラグインを使用するとエフェクトの使用前と後で位相の変化が起こらない為、センドして戻してといった使い方をしても全く問題なく音を合成出来るようになるのです。
上記のような極端な事は起こらずとも、やはり位相がずれた音を合成してしまうと若干響きにおかしな部分が発生してしまいがちです。
マスタリング時のような、音に変化が起こって欲しくない状況の場合は、可能な限りリニアフェーズなエフェクトを使用するようにしましょう。